Stripe手数料の全体像
Stripeはオンライン決済サービスのひとつで、クレジットカード・サブスクリプション決済を簡単に導入できる点が特徴です。個人事業主の方でも少ない初期設定で始められますが、その一方で「手数料がどの場面で発生しているのか」が分かりづらく、売上管理でつまずきやすい部分でもあります。
まず押さえておきたいのは、Stripeの料金体系は「決済が発生したときに手数料を引かれる」というシンプルな仕組みで、月額固定費は原則ありません(※一部の追加機能を除く)。手数料の種類は大きく次の2つに分類できます。
- 決済手数料(カード決済など)
- サブスクリプション機能利用時の手数料(Stripe Billing)
特に個人事業主の場合、「売上の数字と入金額が一致しない」ことに戸惑う場面がよくあります。これは決済ごとに手数料が自動で差し引かれて入金されているためで、Stripe特有の仕様ではありませんが、慣れないうちは混乱しやすいポイントです。
本章では、Stripeが採用している決済モデルと、個人事業主が知っておくべき料金体系の基本構造を整理します。これを理解しておくことで、後の具体的な計算がスムーズになります。
Stripeの特徴と決済モデル
Stripeの最も大きな特徴は、API(プログラムで機能を操作する仕組み)による柔軟な連携と、決済処理の透明性です。カード情報はStripe側で安全に処理され、事業者側は情報を保持しないため、セキュリティ負担が大きく軽減されます。
決済が発生すると、その金額から手数料が差し引かれ、残りが「売上」としてStripeアカウントに反映されます。入金タイミングは通常毎週または毎月で、手数料はその都度自動的に精算されます。
このように、Stripeは決済発生から入金までをワンストップで管理してくれるため、売上の可視化がしやすい仕組みになっています。
個人事業主が知るべき料金体系の基本
Stripeの料金体系はシンプルですが、正確に把握するには「どの決済方法に、どの手数料が適用されるのか」を理解しておく必要があります。
基本的な構成は次のとおりです。
- 国内カード決済:標準的な手数料率が適用される
- 海外カード・AMEX:追加料率が上乗せされる
- サブスクリプション:Stripe Billing の利用料が発生
- 返金:手数料は戻らない(返金手数料は無料)
特に「返金しても決済手数料は戻らない」という点は見落とされがちです。事前に把握しておくことで、サービス提供後のトラブルを防ぐことができます。次章では、これらの手数料の内訳をより具体的に説明していきます。
Stripeの決済手数料の内訳
Stripeの決済手数料は、最も利用される「国内カード決済」をベースとし、カード種別や国によって追加料金がかかる仕組みです。料金体系は比較的理解しやすいものの、「海外カードの扱い」や「返金処理のルール」など細かな違いを押さえておかないと、実際の売上と手数料の差分が把握しづらくなります。
本章では、個人事業主が特に知っておきたい主要な手数料項目について整理していきます。
国内カード決済の手数料
国内で一般的に利用されるVisa、Mastercard、JCBなどのカード決済には、Stripeの標準手数料が適用されます。手続きはすべてStripe側で完結するため、追加の契約や月額費用は不要です。
国内カード手数料は「売上 × 手数料率」によって決まります。売上の規模に関係なく一定の比率で計算されるため、事前に収益計画に反映しやすい特徴があります。具体的な料率は、Stripe公式ページで最新のものを確認してください(手数料は変更される可能性があります)。
海外カード・AMEX利用時の追加費用
海外発行カードやAMEX(アメリカン・エキスプレス)は、国内カードとは異なる料率が適用されます。これは、国際ブランドのネットワーク利用料や為替リスクなどの影響があるためです。
海外顧客が多いサービスや、海外ユーザー向けのデジタルコンテンツを扱う場合は、この追加料率が収益に大きく影響することがあります。手数料の計算では、国内と海外の割合を分けて考えると、より正確な見積もりが可能です。
返金(Refund)時の扱いと注意点
Stripeでは返金手数料そのものは無料ですが、「決済時に引かれた手数料」は戻りません。つまり、売上が返金された場合でも、決済手数料分だけは事業者側の負担になります。
例えば、10,000円の決済が返金されると、顧客には10,000円が返金されますが、事業者は手数料数百円を負担したままになります。この部分は運営コストとして計画に含めておくことが大切です。特に返品が多い業態では、決済手数料の累積が収益に影響するため注意が必要です。
サブスクリプション利用時の手数料
Stripeでサブスクリプション(定期課金)を運用する場合、「Stripe Billing」という追加機能を利用します。サブスクの請求管理・更新・失敗時のリトライ処理などを自動化でき、個人事業主でも安定した継続課金モデルを実現しやすくなります。
ただし、通常の決済手数料とは別に「サブスク利用料」が発生する点は事前に押さえておく必要があります。サブスク売上が増えるにつれて料金も比例していく仕組みのため、収益計画や単価設計に影響が出る場合があります。
Stripe Billing の料金体系
Stripe Billing では、サブスクリプションを扱う際に追加料金がかかります。課金頻度や顧客数に応じて合計の利用料が変動する仕組みで、課金成功率を高めるための機能が標準で含まれています。
具体的には、請求書発行や自動請求、カード更新失敗時のリトライなどの処理がすべてStripe側で完結します。このため、手作業での課金ミスを減らせる点は大きなメリットです。一方で、Billingの利用料は売上に連動して積み上がるため、単価の低い商品を扱う場合は利益率を圧迫しないように注意が必要です。料金は変更される可能性があるため、必ず公式の最新情報を確認してください。
サブスク手数料の具体的な計算例
サブスクリプションでは、「決済手数料」と「Billing利用料」の両方を考慮する必要があります。例えば、月額3,000円のサービスを100名に提供しているケースを考えてみましょう。
まず、決済手数料は通常どおり「売上 × 料率」で計算されます。さらに、Billing利用料が売上の一定割合として発生します。その結果、サブスク事業の実際の利益は「売上 − 決済手数料 − Billing利用料」で算出されます。
このように、サブスク型のビジネスでは仕組みを正しく理解していないと「思ったより利益が少ない」状況が起きやすいため、事前に計算式を明確にしておくことが重要です。
実際の手数料計算方法
Stripeの手数料計算は一見複雑に見えますが、基本的には「売上金額 × 指定の料率」で求めることができます。国内カード、海外カード、サブスクなど複数の決済方法が混在する場合は、それぞれを分けて計算することで正確な手数料総額が把握できます。
また、個人事業主の場合は、売上の規模に応じて月次の手数料負担が大きく変動するため、売上計画の段階で概算値を出しておくことが大切です。本章では、手計算のステップとPHPを使った自動計算の例を紹介します。
売上ごとの手計算ステップ
手動で費用を計算する場合、次のような手順で進めるとシンプルです。
- 決済方法ごとに売上金額を分ける(国内カード/海外カード/サブスクなど)
- それぞれに適用される料率を確認する
- 「売上 × 料率」で手数料を算出する
- 複数の手数料を合算し、最終的な手数料総額を得る
特に海外カードやAMEXは料率が上乗せされるため、国内カードと同じ計算式で処理しないよう注意が必要です。サブスクの場合は、決済手数料に加えてBilling利用料が発生するため、二段階で計算するのが正しい方法です。
自動計算するPHPサンプルコード
手計算が面倒な場合は、PHPを使って簡易的な計算ツールを作成することも可能です。以下は基本的な決済手数料を計算するサンプルコードです。
<?php
// 手数料率(例:国内=3.6%、海外=4.2%、Billing=0.5% など)
$rate_domestic = 0.036;
$rate_foreign = 0.042;
$rate_billing = 0.005;
// 売上データ
$domestic_sales = 10000; // 国内カード売上
$foreign_sales = 5000; // 海外カード売上
$billing_sales = 30000; // サブスク売上
// 計算
$fee_domestic = $domestic_sales * $rate_domestic;
$fee_foreign = $foreign_sales * $rate_foreign;
$fee_billing = $billing_sales * $rate_billing;
// 合計
$total_fee = $fee_domestic + $fee_foreign + $fee_billing;
echo "総手数料: " . number_format($total_fee) . "円";
?>
料率は例示のため、実際にはStripe公式サイトで最新の数字を確認したうえで設定してください。ツール化しておくと、毎月の売上管理が大幅に効率化されます。
売上レポートを使った確認方法
Stripeでは管理画面からダッシュボードにアクセスすると、売上や手数料の内訳が自動集計されたレポートを確認できます。特に「支払い」や「ペイアウト」の項目をチェックすると、決済手数料がどのように差し引かれているかが一目で分かります。
レポートはCSV形式でダウンロードでき、会計ソフトにそのまま取り込むことも可能です。定期的にデータを確認することで、手数料の増減や売上構成の変化に早めに気付けるため、運営の安定につながります。
手数料を正しく見積もるコツ
Stripeの手数料を正しく見積もるには、単に料率を覚えるだけでは不十分です。実際のビジネス運用では、決済の種類・顧客層・返金頻度など、複数の要素が最終的なコストに影響します。個人事業主の場合、少しの差が利益率に大きく響くため、日頃から「どこで手数料が増えやすいのか」を把握しておくことが重要です。
本章では、見落としがちな追加コストと、日々の運用で気を付けたいポイントを整理します。これらを押さえておくだけで、手数料の予測精度は大幅に向上します。
見落としがちな追加コスト
Stripeは料金体系が比較的シンプルですが、実際には決済手数料以外にも次のようなコストが発生するケースがあります。
- 返金時の手数料負担:返金しても決済手数料は戻らない
- 為替手数料:海外カード決済では為替レートの影響を受ける
- サブスクの追加機能費:Billing利用料に加え、機能追加に伴う費用が発生する場合がある
- チャージバック(支払い異議申し立て):発生すると追加コストが掛かることがある
特に返金とチャージバックは多くの事業者が見落としやすいポイントです。返金が多い業態(オンラインスクール・物販・予約制サービスなど)は、一定割合で返金が出る前提で手数料を計算しておくと、月次の収益予測が安定します。
また、海外ユーザーが多いサービスでは為替の変動も無視できません。Stripeのレートは市場レートと完全に一致するとは限らないため、海外向けビジネスでは「多少の差分が出るもの」と理解しておくと精神的にも楽になります。
運用中にチェックすべきポイント
Stripeの運用を続けていくうえで、手数料を最適化するために次のポイントを定期的にチェックすることをおすすめします。
- 売上構成比の変化:海外ユーザー比率が増えると手数料も上昇する
- 返金率:返金の増加は手数料負担を押し上げる要因
- サブスクの継続率:Billing利用料が売上に比例して増減する
- 決済失敗率:カード更新エラーなどの再請求により間接的なコストが増えることがある
Stripeダッシュボードでは、決済状況を細かく分析できるレポートが提供されているため、月に一度はチェックしておくと安心です。特に新しい商品を追加した直後や、海外ユーザーが増え始めた時期はデータの変化が出やすいため、こまめに確認することで「気づかないうちに手数料負担が増えている」という状態を防げます。
よくある質問(FAQ)
Stripeの手数料については、個人事業主の方から共通して寄せられる質問がいくつかあります。ここでは、よくある疑問をまとめ、実務で迷わないためのポイントを簡潔に整理します。
Q1. 入金額が売上より少ないのはなぜ?
Stripeでは、決済が発生した時点で手数料が差し引かれるため、入金額は「売上 − 手数料」となります。月末の入金額が見込みより少ない場合は、国内・海外・サブスクの比率を確認すると原因が見つかりやすいです。
Q2. 返金したら手数料も戻りますか?
返金手数料そのものは無料ですが、決済時に差し引かれた手数料は戻りません。返金が一定割合で発生する業態では、あらかじめ手数料相当額をコストとして計上しておくことが重要です。
Q3. サブスクの手数料はどのタイミングで支払われますか?
Stripe Billing の手数料はサブスク売上に応じて自動的に差し引かれます。定期請求のたびに計算されるため、サブスク会員数の増減によって毎月の負担が変動します。
Q4. 海外カード比率が高い場合の対策はありますか?
海外ユーザーが多いビジネスでは、追加手数料の発生を前提として利益設計を行うのが基本です。場合によっては、海外向け価格を国内より高めに設定するなど、価格調整で負担を吸収する方法もあります。
Q5. PHP以外の言語でも計算ツールは作れますか?
はい、同様の処理は他のプログラミング言語でも実装可能です。ただし本記事ではPHPに特化して解説しています。
以上がStripe手数料に関するFAQです。疑問点が残る場合は、Stripeダッシュボードまたは公式ドキュメントで最新の仕様を確認し、必要に応じて数値を調整しながら運用すると安心です。

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