ネットで買い物をするときに「特定商取引法に基づく表記」というページを見たことがある人も居るかと思いますが、このページでは「特定商取引法」についてざっくりと解説してみたいと思います。
特商法で住所公開が求められる理由とは
特定商取引法の目的と背景
特定商取引法(略して「特商法」)は、ネットショップや通信販売におけるトラブルを防ぎ、消費者を保護するために制定された法律です。詐欺的な販売や連絡の取れない販売者を防止するため、事業者情報(氏名、住所、電話番号など)の明示が義務づけられています。
この仕組みにより、購入者は「誰から買っているのか」を把握でき、万が一トラブルが発生した際も連絡・返金対応が可能になります。
つまり、住所公開は消費者保護の観点から「取引の透明性を確保するための仕組み」として位置づけられているのです。販売者にとっては負担に感じられる部分もありますが、信頼性を高める重要な要素でもあります。
「通信販売事業者」の定義
特商法では、通信販売とは「インターネット、SNS、電子メール、カタログなどを通じて、購入申し込みを受け付ける販売形態」と定義されています。つまり、個人であっても、一定の販売活動を継続して行っている場合は「通信販売事業者」とみなされます。
単発であっても販売ページを設けている場合や、決済リンクを公開している場合は該当する可能性があるため注意が必要です。
特商法の適用対象となるかどうかは「取引の形態」で判断されます。たとえ副業や趣味の延長であっても、販売行為を行う以上は事業者としての責任が発生します。
法律上の立場を理解したうえで、正しい情報開示を行うことが信頼構築の第一歩です。
住所公開が必要になるケースと不要なケース
住所公開が義務となる販売形態
特商法では、「消費者が事業者の所在を確認できる状態」を求めています。そのため、次のような販売形態では住所の明記が義務になります。
- 自社のネットショップ(BASE、Shopifyなど)で商品を販売している
- オンライン講座やデジタルコンテンツを個人で販売している
- InstagramやLINEを通じて直接受注・販売を行っている
これらはいずれも「通信販売」に該当するため、販売ページに「特定商取引法に基づく表記」を設け、住所を含む事業者情報を記載する必要があります。
ただし、住所を明記するのは「消費者が請求したときに開示する方式」でもよい場合があります。2022年の法改正により、一定の条件下では「請求時開示」も認められるようになりました。詳細は消費者庁のガイドラインを確認しましょう。
個人講座やデジタル教材販売の例
たとえば、Zoom講座・PDF教材・オンラインスクールの販売は、物理的な商品ではなくても「有償で提供するサービス」として特商法の対象になります。販売ページ上に「特定商取引法に基づく表記」ページを設け、販売者情報を記載することが原則です。
一方で、Udemyやnoteなど「プラットフォーム型サービス」を利用して販売する場合は、運営事業者が特商法上の情報を管理しているケースがあります。この場合、個人販売者が自ら住所を公開しなくてもよいことがあります。
ただし、プラットフォームによって対応が異なるため、「特定商取引法に関するガイドライン」または各サービスの利用規約を事前に確認しておきましょう。
公開したくないときの代替策
バーチャルオフィスの利用
自宅住所を公開したくない個人事業主にとって、最も一般的な対策が「バーチャルオフィス」の利用です。バーチャルオフィスとは、事業用の住所だけを貸し出してくれるサービスで、郵便物の受け取りや転送にも対応しています。
特商法の「住所」はあくまで事業者と連絡が取れる場所であればよいため、バーチャルオフィスの住所を記載することも可能です。
ただし、注意点として「特商法目的での利用を許可しているか」を事前に確認しましょう。中には「登記用のみ」「法人限定」としている事業者もあるため、契約前に用途を明示しておくことが大切です。
バーチャルオフィスを活用すれば、プライバシーを守りながら法令を遵守した販売活動が行えます。
実際にバーチャルオフィスを利用しているので、興味がありましたら以下の記事も見てみてください。

特定商取引法の「記載代行サービス」
最近では、特商法の住所や電話番号を自社の情報で代わりに掲載してくれる「記載代行サービス」も増えています。販売者の個人情報を守りつつ、法令遵守を実現できる点がメリットです。
特に、決済代行プラットフォームや講座販売システムの中には、事業者向けにこの機能を提供しているものもあります。
たとえば、「販売サイト上の住所を代行会社が掲載し、購入者からの問い合わせを代理で受け付ける」という仕組みです。この場合、購入者が事業者と連絡を取れるルートが確保されていれば、法的には問題ありません。
ただし、代行を利用する場合でも、最終的な責任は販売者自身にあります。代行先の信頼性や運営体制を確認し、安全性を確保しましょう。
実際の公開事例と注意点
実店舗・オンライン講座の実例
ここでは、実際に特商法に基づく住所公開を行っている個人事業主のケースを紹介します。
- ハンドメイド販売者Aさん:自宅住所の公開に抵抗があったため、都内のバーチャルオフィスを契約。特商法ページにその住所を記載し、問い合わせフォームを設置しています。これにより、購入者からの信頼を保ちながらプライバシーも確保。
- オンライン講座講師Bさん:販売プラットフォームの「特商法表示代行」機能を活用。住所を非公開にしつつ、運営会社経由での問い合わせ対応が可能に。
これらの例に共通するのは、「連絡手段を確保している」点です。特商法の本来の目的は、住所そのものの公開ではなく、「消費者が安心して販売者と連絡できること」にあります。住所公開を最小限にしながらも、信頼を損なわない方法を取るのがポイントです。
住所公開によるトラブル防止策
住所をやむを得ず公開する場合には、プライバシー保護のための対策も重要です。以下の方法を組み合わせると、リスクを最小限にできます。
- 郵便物転送サービスを利用して自宅住所を隠す
- 私書箱やレンタルオフィスの住所を活用する
- 住所をテキストではなく画像として掲載し、自動収集を防ぐ
また、SNSやブログでの住所掲載には細心の注意を払いましょう。検索エンジンにキャッシュが残ると削除が難しくなるため、公開範囲を限定する設定も有効です。
法令遵守と個人の安全を両立させるために、事前の対策が欠かせません。
個人事業主がとるべき実務ステップ
公開前に確認すべき3つのチェック
住所を公開する前に、特商法の適用対象であるかを冷静に確認しましょう。ここでは、個人事業主が最低限押さえておくべき3つのチェックポイントを紹介します。
- ① 自分の販売形態が「通信販売」に該当するか
ウェブサイト・SNS・メールなどを使って不特定多数に販売している場合は、通信販売に該当します。たとえ副業レベルであっても、販売を継続して行っていれば特商法の対象となる可能性が高いです。 - ② 住所公開の義務があるか
住所の記載義務は「購入者が事業者の所在を確認できる状態」にするためにあります。法改正により、条件を満たせば「請求時開示方式」も選択できるようになりましたが、現状では多くの個人事業主が住所を掲載しています。まずは自分の販売環境(自社サイトか、プラットフォーム経由か)を整理しましょう。 - ③ プライバシーを守る代替策を検討したか
バーチャルオフィスや記載代行サービスを利用することで、自宅住所を公開せずに法令を遵守できます。コストはかかりますが、信頼と安全を両立する手段として検討する価値があります。
上記の3点を整理するだけでも、後々のトラブルを防ぎ、スムーズに販売活動を進めることができます。
公式ガイドラインと相談窓口
特商法に関する最新情報は、必ず消費者庁の公式サイトで確認しましょう。特に2022年以降の改正により、「請求時開示方式」や「電子商取引における新ルール」など、実務的な変更点が多く存在します。
情報が古いブログやSNS投稿だけを頼りにすると誤解が生じやすいため、一次情報を確認する習慣を持つことが大切です。
もし判断に迷う場合は、以下の窓口に相談するのも有効です。
- 消費者庁「特定商取引法相談窓口」
- 最寄りの「消費生活センター」
- 商工会議所・創業支援センター
これらの機関では、個人事業主でも無料で相談できる場合があります。販売開始前に一度相談しておくと、安心してビジネスを進められるでしょう。
特商法は「消費者を守る法律」であると同時に、「誠実な事業者を守る仕組み」でもあります。正しい理解と運用で、信頼されるネット販売を目指してください。
具体的な特定商取引法に基づく表記の書き方については以下のページにまとめてあります。 テンプレート付きですので、よかったら参考にしてください。



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